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ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

夏への扉夏への扉
(2013/05/24)
ロバート A ハインライン、福島 正実 他

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電子書籍のストアを見ていると、昔の本が買いたくなります。ずっと前に読んだきりの小説とか、名前だけは知っている定番の名作とか。

先日、目にとまったのがR・A・ハインラインの『夏への扉』。好きなSF小説のアンケートを取ると、必ず上位にランクインする定番中の定番ですね。ずっと前に読んだのを思い出して電子で買い直してみました。

もともとは1950年代に書かれた小説です。
物語の舞台となるのは、執筆当時からみると近未来である1970年代。そこで家電製品の技師をしている主人公が、冷凍睡眠によって、30年後の未来社会に行ってしまう――というお話です。

ぼくが初めてこの本を読んだのは10年ぐらい前ですが、そこで描かれる1970年代の近未来が、とても魅力的に思えたのを覚えています。
物語の舞台となるのは、21世紀の我々から見ると、どこか懐かしくも感じられるレトロな未来社会。
そこにはネットも携帯もPCもないけれど、かわりにどこかアナログなロボットたちが家庭に普及し始めています。そして主人公のダニエルは、家の中を自動的に掃除してくれる「文化女中器」や「窓拭きウィリィ」、家の中の細々した家事を片付けてくれる「万能フランク」といった、家庭用ロボットを作っている腕利き技師。彼がどんなふうに考えてそれらのロボットを作っているのか――今まさに「未来」を作っているダニイの視点から見ると、単に舞台設定として未来社会を見せられるよりも、何倍も実在感を覚えるのです。

ダニイが作る発明品の中には、すでに現代社会では実現しているものもあったりします。
機械の操作で正確な図面を作ってくれる「製図機ダン」はCADだし、「自動秘書機」は音声入力のワープロみたいなものですね。それに2014年の今日になって読み返してみると、「文化女中器」ってルンバですね。自動的に家の中を動き回ってゴミを集めて、動力が切れると所定の場所に戻って充電する機能までついているんですよ。

で、今回読み返してみて思ったんだけど、やっぱり面白いなあ――と。
主人公のダニイは魅力的な人物だし、すべてを失った彼が、前向きな行動力を発揮して窮地から巻き返してゆく過程は爽快感があるし……。現在のタイムリープものにはもっと凝ったギミックや複雑なトリックの作品がいくらでもあって、きっと現在の読者が『夏への扉』を読んでも、予想外の驚きを感じることはないでしょう。でもそういう小技の部分ではなく物語自体にパワーがあって、読者をぐいぐい引き込んでゆくんです。10年ぶりに読んだ今回も、お話の大筋は覚えていたというのに、すっかり夢中になって一気に読み終えてしまいました。

今回、いろいろ調べてみて初めて知ったんだけど、日本語訳を改めた新版も出てるんですね。訳語も今風になって、たとえば「Hired Girl」は「文化女中器」から、「おそうじガール」に変更されているのだとか。そちらもそのうち目を通して、読み比べてみたいものです。

2014/07/17 00:00 | 読書メモCOMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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