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道具の問題

文章仕事をしている人にとって常識なのですが、ライターが書く原稿は、基本的にプレーンテキストで出版社に納品します。

きっと世の中には、手書きの玉稿を編集が取りに来る大先生もいるとは思うのですが――でも僕が知っている範囲では、テキストファイルにまとめて、メール添付で納品するのが普通ですね。ライター仕事を始めたばかりの新人は、たいてい、最初に編集者から、「原稿はWord形式ではなく、テキストファイルにしてください」なんてことを教えられると思います。

そういうわけで、僕はずっと、ワープロソフトとは無縁に過ごしてきました。
どうせ最終的に納品するのはテキストファイルなんだから、最初から動作が軽いエディタを使ったほうが楽だと思っていたのです。

雑誌ライターの仕事で愛用していたのは「space editor」。
フリーの多機能エディタですが、なんといってもすばらしいのは、ショートカットキーで、簡単に一行あたりの文字数を変更できる点です。

雑誌というやつは、無数の細切れの文章でできています。
12文字のキャッチ、22文字×2行のリード、16文字の見出し、16文字×16行の本文、12文字の囲み見出し、15文字×8行の囲みネーム、7文字×4行のキャプションが4本……一つの見開きは、そうした短い文章が10本も20本も集まってできています。
そんなふうに、文字数も行数もばらばらの文章を大量に書かなくてはならないとき、space editorの文字数調整機能が、この上なく役に立つのです。

小説の仕事で使っていたのは「vertical editor」。
こちらは、「アウトラインプロセッサ」というジャンルのソフトです。
アウトラインプロセッサは、長文の構想を練りながら書き進めてゆくのに便利なツールです。同種のソフトウェアでは、「story editor」や「idea tree」なんかが有名ですね。

その中でもvertical editorを好んで使っていたのは、文章を縦書きで表示できるのが気に入っていたためです。
小説のプロットを構想する段階では横書きでもいいんだけど、やはり実際に文章を書くときは、縦書きじゃないと、いまいち気分が乗らないのです。
その点、vertical editorは、プロット作成から、実際の執筆までをシームレスにこなすことができて、大変、重宝していました。

そして、今使っているのは「一太郎」。
最初はワープロソフトなんて興味なかったのですが、一度使い始めたら、もう手放せなくなってしまいました。

一太郎で気に入っているのは、なんといっても、文章を書きながら、手軽に辞書を引けること。ことに2015年版などは、Ctrlキーを押すだけで言葉の意味を調べられて、大変に重宝しています。
さらに文章の校正機能も充実しており、表記ゆれやミスタイプを片っ端から指摘してもらえるので、ずいぶんと文章の間違いが少なくなりました。

今までいろいろなエディタやアウトラインプロセッサを試してきたのですが、さんざん遠回りした挙げ句、結局「一太郎最高!」という、わりと普通の結論にたどり着いてしまいました。

ただ、長文をゴリゴリ書き進めるには、やっぱりvertical editorのほうが向いていたりするんですよねえ。
一太郎を使い始めてから、文章の精度が上がった反面、執筆速度は落ちてしまったような気がします。やりたいことが全部できる最高の道具というのは、なかなか見つからないものです。

2015/04/15 09:15 | 雑記COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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