知らないうちに影響を受けている2
ええと……『ガラスの仮面』の説明はしたほうがいいのかな?
一見平凡そうだけど、実は演劇に対する並々ならぬ情熱と才能を秘めた主人公・北島マヤが、舞台女優としてその天才を発揮してゆく姿を、30年以上にわたって描き続けている少女漫画の名作です。
『ガラスの仮面』の芸能界編は、いままでずっと舞台女優としてやってきた主人公が、大きな賞を取ったのをきっかけに一躍時の人となり、連続テレビドラマに出演するあたりのエピソードです。
ずっと不遇で不幸で貧乏な生活を送ってきたマヤがスターの仲間入りをして、だけど華やかな生活の裏では、不穏な気配も蠢いていて……。そういった物語としての盛り上がりもさることながら、ここで登場する乙部のりえさんが、とてもいいキャラクターなんです。
乙部のりえは、スターになった北島マヤの付き人を務める、いかにもパッとしない、どんくさそうな女の子。
この芸能界まわりのエピソードでしか登場しないけど、きっと『ガラスの仮面』を読んだことのある人なら絶対に忘れられない、とびきり印象に残るキャラクターです。ぼくは、この乙部のりえさんが大好きなんですよ。
と、そんなことを考えているうちに思い出したのが、『ふたなりアイドル★でかたま系』のこと。
あのゲームのノベライズを任せて頂いたとき、物語を盛り上げたり引っかき回したりするために、小説版オリジナルのキャラクターを一人追加しました。それが見習いマネージャーとして、主人公コンビのお世話をする小宮山美弥子です。
最終的な原稿では「見習いマネージャー」ってことになっているけれど、一番最初に考えた彼女の役どころは、主人公たちの付き人でした。スウィートフルーツの二人に憧れて同じ事務所に入って、付き人として行動をともにする――という予定だったんです。
アイドルもののゲームでオリジナルキャラクターを追加しようと思ったら、例えばスポンサー会社の社長でも、熱心なファンでも、好色なカメラマンでも、取材に来たライターでも、いくらでも選択肢があります。そんな中からごく自然に「付き人の女の子」っていう発想が出てきたのは、もしかすると、『ガラスの仮面』の乙部のりえの影響だったのかなあ……なんて思うのです。
漫画でも小説でも映画でも、とびきり好きな作品というのは、心の深い部分に入り込んで、自分の人格の一部になっています。今まで書いてきたものも、きっと知らず知らず、他の作品の影響を受けていたりするのでしょう。
2014/06/12 00:00 | 雑記 | COMMENT(0) | TRACKBACK(0)